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真実と真相(35)

7)四面楚歌

     心労を与えたのは被害者の家族、それにまつわる人々であり、幼い頃を支えてきた親だったのではないか。 そんな事はいざ知らず、身勝手な市場はここから釈放されたいと一心に願うばかりだ。 

     そのうち厳しい取り調べに対して身も心も疲れ果てたという感じになってきた。 容赦ない尋問に耐え切れず、ついに市場は「東京」とポツリといった。 そして脅されるようにしながら東京のどこかを問いただされた。 のらりくらりした揚句、仕方なく以前住んでいた新興住宅街近くのタカウラ通りの住み慣れたアパートの住所を言ったのだった。

     市場は東京の住所を言ってしまってからは、空き巣狙いを認めるだけで逃げきる事は難しいような気がして不安で一杯になった。 実に今回の空き巣狙いは命取りとなるほどの不覚だった。 何のために大阪に来たのだ。 
 
     当然警察内部でそれなりに事件の情報は密になっていた。 タカウラ通りといえば、未解決殺人事件からとても近い場所。 あんなにテレビでも放映した場所である。 各警視庁はデータを保持しており捜査本部に情報は行き渡って内容を把握できるようになっている。
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真実と真相(34)

     身内から現金で直接受け取ったということにしても、いつどこで身内の誰から援助を受けたのかと問われるのである。 いくら身内でも、嘘を言えば偽証罪に問われる。 第一今さら嘘を言っても、身柄を拘束されており、事前に打ち合わせでもしない限り話が食い違って、すぐにばれてしまう。 事実を証明するには、確かな裏付けがなければならない。
 
     しかし、市場は今回の空き巣だけ自供しておくことにして、何とか殺人までには捜査が及ばないようにしなければいけないと、自分に言い聞かせていた。 空き巣狙いを認めても、他の事はしらばっくれていればよいのだと。 あの殺人の件は、大阪にいる限り発覚しないから大丈夫だと懸命に自分を奮い立たせていた。

     市場は意志が弱く自己中心的だったので、仕事も長続きしないでいた。 誘惑に弱く、犯罪に誘われやすいタイプである。 自分の人生を長い目で見ることができない、短絡的な性格であった。 よくある極端な自己中心の行動パターンをとっていた。 自分の能力がそれほどでもないということになると、その日暮らしが続きそのうち生活が破綻するというケースだった。

真実と真相(33)

     市場はホームレスをやっていたと言おうとしたが、この調子でいくとどこでどんなホームレス仲間がいたかを聞かれるのはもう目に見えていた。 捜査を攪乱するようなことを言うと、ただではおかないという雰囲気である。 警察側も嘘に翻弄されて、むやみに拘置する日数を長引かせたくはない。 

     取調官は「来る前はどこでどうしていた? いい加減に白状したらどうだ」と執拗に迫った。 他でも空き巣狙いをやっていたのではないかと益々疑いを深めているようだ。 「どこに居たんだ、この野郎!」とどなり声が響く。

     市場はすでに所持金を調べられていた。 市場犯人のやっている事は、目的や狙いを考えるまでもない単純な動機である。 しかし、少ない所持金で大阪へ来たのは訳があると考えられる。 

     犯行前まで現金で貯金があったといっても、最後に仕事を辞めたところに問い合わせれば勤務記録の確認もできるので、いつ支払がありいくらだったかも解る。 失業期間が長ければ、貯金の切り崩しによる生活はおおよその予算の見当がつく。 離れて住む家族から送金があったと言えば、銀行やぱるるの口座番号で資金の流れを調べればすぐにわかる。

真実と真相(32)

     警察は今回の空き巣以外に、同じような手口で窃盗を繰り返していた余罪があるかもしれないと考えた。 

     翌日になると、「最近引っ越しているようだが、なぜ引っ越してきた?」という捜査官からの尋問があった。 市場は大阪の住所を言ったので警察は直ぐに家宅捜索を行い周囲の人からの聞き込みをして、身元確認を行っていた。 

     「大阪に知り合いでもいるのか?」という質問が続いた。 「いません」と、ふてくされた態度で市場は答えた。 警部は何度も確認し、嘘を言うと為にならないという忠告をした。 しかし嘘ではないらしい。 どうやら空き巣狙いの仲間はいない単独犯のようだ。 

     新しい就職口があったわけでもなく、知り合いもいないのにわざわざ大阪に引っ越し、直ぐに犯罪を起こしたとなると何らかの理由で引っ越したことになる。 
「ここへ来る前はどこにいた? 仕事も途切れていたのに、今までどうやって生活していた?」と、強い口調で取り調べが続いた。  出鱈目な事を言っても調べれば解る事である。

真実と真相(31)

     犯行後の連絡が早かったことと、被害者が家を空けていたわずかな犯行時間が限定されていたので、すぐに事実が明るみに出ただけの事はあった。 

     偶然外にいた近所の住人が、その時間に見慣れない人物を見かけたという情報提供があった。 その情報は服装などが、市場と一致している。 しかも市場容疑者にはその頃、どこで何をしていたかというなんのアリバイもないし証明できる手段がないのである。

     現場検証での足跡の証拠写真を突きつけられ、言い逃れはむずかしそうである。 警部は供述するのを手こずらせた所で、いずれ髪の毛のDNA鑑定をすれば判明するのだと言って自供を迫った。 足跡の証拠写真を突きつけられて市場容疑者は、もはやシラを切りとおすことは無理と判断した。 凄まれて、市場はもう仕方がないと諦め境地になっていった。 

     盗んだ金額は大したことなかったので、潔く空き巣狙いを認めることでその場を切り抜ければ良いと考えた。 結局、遠山警部が思ったとおり詳しい動機など聞くまでもなく、思うように仕事も見つからず、手っ取り早く現金を手に入れるため犯行に及んだことを自供した。 認めてしまえばこれで済むだろうと、市場は甘く考えていたのだ。

真実と真相(30)

     見た目には残虐性のある人物には見えない。 しかし、先入観を持たずに調べてみないと 解らないものである。 薬物などは利用していないようだ。 市場は、本籍や出生地などを聞かれると取り調べに素直に応じたが、それ以外の事は黙秘していた。

     驚いたことにわずかな情報でかなり調べられていた。 翌日になると「たびたび消費者ローンを使っていたようだな」と警部は市場に言った。 融資を受けていたのは事実だった。 「クソッ!」なんだか見透かされたようで男は困惑した。 警部は男の一瞬の焦りの色を見逃さなかった。 融資額は少なかったが、追い詰めれたような気がして冷や汗が出た。

     取調室で「俺はやっていない」と犯行を否認していたが、いつまでもそれで済む訳ではなかった。 

     「嘘じゃないという説明はつくのか」という鋭い問いかけに、容疑者は小刻みに震えていた。 市場は強気に出て時には反抗的態度を取ったりしたが、だんまりを決め込むのも長くは続けさせない状況だ。

真実と真相(29)

6) 経緯

     容疑者は住居侵入と窃盗の疑いで捕まり身柄を拘束された。 男は運動靴にジャケット、ややダブダブしたジーパンをはいていた。 着ている服はくたびれていて今どきのおしゃれな若者のファッションとは少し違う。 髪のクシャクシャ具合もおしゃれでやっているのと異なる。 

     捕まった当初、容疑者はワナワナしていた。 取調室に入ると、遠山警部がやってきた。 容疑者はメガネの奥で目を泳がせるように警部の顔を見ると、直ぐに目をそらせた。 「どうしてここへ来たか解ってるな」と、言った。 警部はベテランらしく目が鋭く、角ばった顔をしている。 背が高く、日頃から鍛えていると思われる体格の持ち主だったので、容疑者は思わず萎縮したが何も言わなかった。 

最初に「名前は?」ときかれた。 
「イ、イ、イチバ・・・市場株吉です」
株式市場みたいな名前だな、と遠山警部は思った。
「住所は?」
仕方がないから市場容疑者は大阪の住所を答えた。 
「職業は?」
「今、これといった仕事はありません」と、市場は恐る恐る答えた。 そして日雇いの仕事をしていた時、契約が成立すると長期で飯場という宿泊施設に入ってそこで寝起きしながら仕事に行くような形態をとっていたことは付け加えた。

真実と真相(28)

     住人が家を出るのを見届けると、男は一軒家の留守宅にガラスを割ってそっと忍び込み現金を探した。61 


     15分ほど留守にしていた住人が帰宅すると、目に飛び込んできた景色に唖然とした。 「ああっ!」彼女は一瞬何が起きたか解らなかった。 家の中は整然としてあったのに台所の引き出しは開けっ放しになっており、箪笥から衣類が投げ出され荒らされていた。 住人は目を疑って部屋を凝視するとやはり夢ではない。416 


     空き巣に入られたと思い、とっさに警察に連絡した。 彼女はパニック状態になりながらも警察に電話すると、警察は素早く現場に向かい操作が開始された。 322


     「無くなったものは何ですか」と聞かれても、その様なことすぐには判らないし、第一動揺して答えられない状態だった。 しかし、現金はそれほど置いてはいなかったので被害は少なかった。 通帳や印鑑は盗られていない。 それを利用すれば足がつくと犯人は考えたからであった。 426 


     しかし、見かけない人を見たという目撃証言や、現場検証で侵入口に残された足跡などを調べられ、靴の形、サイズ、靴裏の模様が一致した事から素早く容疑者は逮捕された。278

テーマ : 自作小説
ジャンル : 小説・文学

真実と真相(27)

     彼は周りの意見に耳をかさず、何の取柄もなく落ちぶれて行方をくらました格好になっていた。 親とは半ば音信不通状態になっていたので、きっと有罪判決を受けても、彼を知る人は驚かないかもしれない。  世の中が冷たかったのではなく、次第に手を差し伸べる人がいなくなったというのが正しい。 8


     殺害後、ほとぼりが冷めるのを待つように姿をくらました犯人は、次の犯行に至ったのだ。 86


     時を同じくして、東京の警察は事件後に引越した人物がいるのでその人物をマークしていたところ、近所付き合いもなく孤立した人物像が浮かび上がった。 そして大阪で捕まった犯人が元住んでいた所と一致したため捜査線上に絞られてきた。 63


     大阪へ逃走した犯人は空き巣狙いで、泥棒に入ったところを間もなくつかまってしまったのが理由だった。 最終的にこの殺人事件の逮捕劇となったきっかけである。424


     その空き巣狙いで捕まった容疑者は、色白で痩せ形、目立った特徴のない男だ。 30代後半で、まだ若いのでなんでも仕事をすれば何とかなりそうな人間であるが、金目的の犯行である。319

真実と真相(26)

     島木は仕事に出ていたので直接捜査協力のため警察と話すことはなかったが、妻は警察が粘り強く捜査している話は近所の人からも耳にしていた。 しかし捜査は難航し、手がかりはないらしくその後の経過は知らされず3カ月位たった。 56 


5)展開


     ところが、女子学生殺害の犯人が逮捕されたのだ。164 なんと別件逮捕であった。 事件後、容疑者はずっと遠い大阪へ移っていた。 男は大阪でも繁華街から少し離れた静かな所へ引っ越していた。 ここまで来れば人安心という心境であった。


     大阪の住まいは雨風をしのげるといった程度の、今まで以上に古ぼけた建物である。 男は仕事を転々とし、日雇いの現場仕事などが多かったので方々渡り歩くのに慣れていた。 そこは建設現場で働いていた時知っていた場所だからである。  一度来たことがあったので借り手のないような住まいだが、今でも空き部屋があった。 隣でガタガタ音が聞こえるようなつくりでひどい建物だが、この情報が頼りになってくれて引っ越すことができた。244 


     お引越し! お引越し! 東京で犯人は現場付近を嗅ぎまわる警察が煩わしく、できるだけそこから離れたいと思った。 東京のアパートは、仕事を見つけやすく適当に混んでいる場所なので長くいた方だったが、おさらばである 。287

真実と真相(25)

     ヘリコブターが上空をブンブン飛んで、いつもとは違うのである。 住民は何事かと外に出て見上げるほどだった。 37 64 いつもと空気の違う中、昼時妻はテレビをつけると現場付近の映像が出た。 それは、彼女はあまり通らないが当然見知った風景である。 あっ、あそこの場所だわ・・・ 199 と思いながら、妻は黙ったまま画像を見入るのであった。


     事件当初 近所の住人たちは、被害者を気の毒に思いながら話に出ることが多かった。 「全くこの辺を、犯人がウロウロしているのかと思うと怖いわね」などと話に出ると、島木の妻は本当に怖い世の中になったと肌で感じた。 そして空き地というほど広くないが少し奥まった道路わきの、人の目につきにくい事件現場の遺体発見場所には、よく花が置かれていたのだった。265


    その後、疑われている第一発見者は、今ではノイローゼ気味らしいという噂が妻の耳に入った。 精神的に参っていたのだろう。 最初のうちは疑いが晴れると思い、元気にしていたが限界が来ていたのだった。 7142

真実と真相(24)

     妻は、そんな話をしながら突然、「そういえば、この前階段を上っている時何気なく振り向いたら、さっと若い男が木の陰に隠れたような気がした。 すっかり忘れていたけど、警察に言うべきだったかしら。 でも、今頃思い出したのでは仕方がないけど」と、言った。 199


     島木は「考えすぎじゃないのかな。 でも隠れられたりすると、気持ち悪いな」と言った。63


     「今は良い季節で、天気が良くてお花が咲いているのでゆっくり歩いた日だったわ。 昼間だったし、あの時はそれほど気にもしなかったけど」と妻は言った。21


     妻がそんな話をしているが、島木は多少の関心を示すことは示していたが対岸の火事という感じがしていた。 実際、島木と無関係のところで起きているのだから無理もなかった。 事件はテレビでも報道され話題になった。217 島木はテレビをあまり見なかったが、ニュースは事件をあおり立てるものばかりではない。 芸能ニューズではないので週刊誌的に騒ぎ立てて面白がる扱いではなかった。 しかし熱心に取材はされていた。29

真実と真相(23)

     数日後、島木の家にも刑事がやってきた。28 昼間だったので聞き込み調査には妻が対応した。 妻は協力できる事は何もなかったが、こんな風に一軒一軒家を回って調査するのも大変だと思い、労をねぎらうだけだった。 妻は悪いことをしてはなかったが、警察に対してどこか威圧感と興味本位の気分を味わったのが正直な感想である。


     島木はたまに彼女とデートすると帰りは夜11時頃になってしまう。 残業ということになっているので妻には疑われていない。 77


     その日は夕食に間に合うような時間に帰宅すると、妻は「今日は警察の人が手帳を振りかざして『警察の者です』なんて言って、訪ねてきたのでもうびっくりよ。 水戸黄門の印籠みたいに見せたのよ」と、言うのだった。 


     「ふーん、まるで刑事ドラマみたいだな」と島木はいった。 


     島木夫妻は現場から比較的近い所に住んでいるが、その道を通ることはめったになかったし、被害者との面識はなかった。

真実と真相(22)

     島木の住む住宅街は静かで、事件など起きたことがなかったので今回の事件の衝撃が走っている。 自宅の近くは、整備された銀杏並木の街路樹もある。 また、道に沿って斜面になったところが木立なっていて、そこを通ると、夏は樹木で覆われ日陰になりひんやりするオアシスのような道もある。255 


     彼女はその木立が好きであった。 きっと、昔の旅人が歩いたのではないかと思うような自然である。 美しいだけでなく、重苦しいくらいの悲しさを感じる日本的な一昔前の時代を思い起こさせるわずかな場所だ。 なぜか懐かしさでその場にたちつくしたい気持ちになる淋しさにも似た思いがするのだった。 日々忙しい中、立ち止まる瞬間は少ないものである。254 


     誰でも足早に目的地に向かう。 道草を食える子供のように立ち止って眺めることは少ないものだ。 どこから始まりどこで終わるかなどない、無限性を感じる瞬間である。 生まれては死に死んでは生まれる人間、めぐってくる季節も同じことである。 永久という無限の中の一瞬を、感じ取る瞬間である。 252その時、何も知らずにそんな悠長な感傷に浸っていたのは彼女だけだった。

真実と真相(21)

     「あーあ、こんな事に巻き込まれてついてない」と、恨めしい気分であった。 年老いた男の一人暮らしの家の中は質素で明るさがない。481


     しかし年齢を重ねると、同じように疑いをかけられた幸子と違って思いつめたりはしない。 アルコール類はストレス解消に一役買うが、幸子には当てはまらなかった。 長く生きれば悲しい経験が多いのは確かである。 「好きなだけ身元調査でもなんでもするが良い」と、第一発見者の老人は思った。 いずれ無実が証明されると思い、とこ吹く風でいられるのは時間の問題であった。  彼は不快に感じながらも窓の向こうで勢いよく上りあがるネコの走る姿を眺めながら、いつもの淡々とした生活をするだけだ。345


     そして、彼には前科はなく殺人の決め手となる手がかりはなかなか出てこなかったのである。 警察は現場付近の住人に、不審な人物を見かけなかったかと聞き込み調査をしていた。494 

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