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真実と真相(20)

     通報した第一発見者は、身体に障害を持ちやや高齢で生活保護を受けていた。 遺体は道路湧きの小さな空き地に放置されており、ちょっと見つかりにくい場所である。 その為、その地域に詳しい人間の犯行かもしれない。119


     警察は疑いを持って第一発見者を随分調べた。 事情聴取に時間をかけられ、聞かれたくない事まで事細かに聞いてくる。 おまけに呼び出されれば「行くのは嫌だ」とは言えず出頭して確認などさせられた。 いい加減に参ってしまい、怒りを通り越した心境だ。 440


     「畜生! 通報してやったこの俺を疑うなんて! あいつらバカか!」281 それどころか彼は、「第一発見者」という初めて手に入れた肩書き、初めてのお手柄ということで何か褒美が出るのではないかと期待しているくらいだった。 それなのに感謝されるどころか疑いをもたれるとは実に腹立たしい。


     不安と悔しさを感じて夜になると、毎日着ているのでくたびれた服をまとったまま、「逃げた女房ことまでききやがって・・・」呟きながら酒に手が伸びコップに注いでいた。268


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真実と真相(19)

     警察は参考人の事情聴取など必要な捜査を行った。 被害者の学校の友人、アルバイト先の人たちは


「恨まれるような事はないはずです」122


「真面目な性格だったのに」91


「信じられない」という意見ばかりだった。47 


     被害者の家族は近所でもトラブルは一切なかった。 警察はおそらく脅してお金を奪い取ろうとしたところ騒がれて殺害に及んだのではないかと推測しているのだった。 


     まだ学生でこれからの人生というだけに殺害されるというのは無念である。 被害者家族のショックは想像に難くない。 296492確かに似たような事件でスーパーへ買い物に向かう主婦をターゲットに、脅して金銭を奪い取るという話を聞くが、買い物に行くのにそれほどの大金を持たない。 買い物するのに不足しない程度の金額を持つのが普通だ。 同様にその学生アルバイトは現金数千円しかもっていなかったのである。 わずかなお金のために殺害されるとは運の悪い学生である。

真実と真相(18)

     妻は島木が職場で慕われるくらいの人であってほしいと思っていた。 バレンタインには、たとえ義理チョコでも誰かくれる人がいれば夫も喜ぶだろうと思い、元気に仕事に精を出してくれたら良いと願っていた。 妻は日常生活の中で、男の美学とプライドを保たせであげたいと考えていたのである。96


     16一方、殺害された被害者は女子学生でアルバイトの帰りだったが、何者かに首を絞められて殺害されたらしい。 いつもより帰りが遅いので心配した家族が迎えに出たが帰宅しないので警察に連絡していた。


     遺体発見後、司法解剖の結果、絞殺による窒息死と断定された。 これは通り魔殺人の可能性もあるので、警察は捜査範囲を広げていた。 一人歩きをしている隙を狙われたのではないか。116 


     家族の証言で被害者は現金をわずかしかもっていなかった。 現場に残された遺留品からは現金だけがなくなっていたので、警察は窃盗事件の可能性が強いと推測していた。 彼女の行動範囲や人間関係から怨恨による殺害は考えにくかった。

真実と真相(17)

4)出来事


     封筒事件の一週間後位に、島木は自宅に帰りつくと、夕食のとき妻が珍しく興奮して話し始めた。 食卓はどこにでもあるようなサラリーマン家庭の光景である。487 


     「この近所で殺人事件が起きて警察が調べているらしいわ。 買い物に出た時、近所の人に聞いたのよ。 物騒な世の中だと言って、皆驚いているのよ」 296


     殺人事件がいつあったのか島木は聞かなかったが、ほんの数日前のことらしい。


     「殺人なんて、少し前まで無縁のところで起きている事だったけど、ついにこの辺でもそんな事件が起きるようになったんだなぁ」と、島木は言った。276 


     新聞記事に小さく載ったが、大きな記事になって出たのは、島木がその話を聞いて少し後であった。 島木の家は東京だが都心ではなく、駅から歩ける範囲で静かで程よく自然が残っていた。 事件は、ちょっと自然の残っているわずかな場所で起きた。 236その周辺は事件とは程遠い感じの住宅街である。 


     愛人の事は妻には気付かれていない。 彼女と付き合い始めて日が浅いと云う事もある。

真実と真相(16)

     無実を証明する何か良い方法はないかと幸子は思案に暮れていた。 あの日、午前中席を立っている間・・・。216 幸子は図面や書類を取りに行くし、FAXを流すこともあるので結構席を立つことは多い。 幸子は意外に執念深かった。 いつもそのことが頭の片隅にあるような感じで考えているが手がかりはなかった。2


    それでも何とかしたいという一念で一日一日を送っていた。 どうして封筒と3万円が私のカバンに入っていたのか。 罪をかぶせようとした恨みによるのだろうか・・・ あの占い当っているのかしら、と不安を抱く今日この頃である。 幸子と恵子は時々電話で連絡を取り合っていた。 二人はついつい占いの話になってしまう。21


「その後、進展あった?」


「ないわよ。 間もなくって、いったいどのくらいのこと?」と、幸子は聞いた。


「さあ、半年以内じゃないの」184


「もっと詳しく聞けば良かったわ。 あの占いは当たらないんじゃないかって疑いたくなるわよ」5


「そうね。 もうしばらくの辛抱で、人の噂も75日って言うじゃない。 それにしても犯人、早く見つかってほしいわね」


「あの爺、適当なこと言っておいたんじゃないでしょうね」


「ウーン ちょっとスケベな感じだったわね」


「えっ、やっぱり。 私もそんな気がした。 適当に返事しただけなら、ただじゃおかないって気分」


「疑ってもきりがないから、もう少し辛抱しなくちゃ」


「はぁ そうね」と、そんな会話が交わされていた。61

真実と真相(15)

     女の子だからやっぱりこだわるな、と島木は寒気を感じた。 過去の思い出に慕ったり、必要以上に心配したりするのは女性の方が執着しやすいからかもしれない。 そういう自分も、小遣いを少しずつ貯めたお金だったので少なからずショックを受けているのだ。16


     島木は残されたお金を封筒に入れたまま、あの日愛人に渡していた。 実際、今さら愛人に封筒だけ返してほしいとは言えない。 封筒を渡したとき、彼女はにっこりと微笑み遠慮がちにお礼を言って受け取った。 言葉を交わす以上の以心伝心だったと島木は感じている。414


     紛失してしまったことで少なくなった金額だが、彼女は島木の善意を素直に理解して「有難う」と言って謹んで受け取った。 彼女なら大切に使ってくれると確信していた。 そのさわやかな彼女の態度が島木の脳裏に甦った。 ビクッとするやら甘い記憶やら、同時にそれとこれとが混在して島木は複雑な心境であった 。421

真実と真相(14)

     「ええっ! ありませんよ。 それに封筒が見つかった時みんなで触ったから犯人の指紋をきれいに取り出すのは無理ですよ。 ここで警察沙汰にすると会社へ刑事が来て、業務に差し支えがありますからね。 ちょっとした騒ぎになりますよ」 281


     それでも幸子が封筒はどこにあるのかなどと聞きはしないかと、島木は内心ギクリとしたが冷静に対応した。 3日も経ってから、彼女がそのようなことを切り出してきたので島木は面食らった。 ましてや封筒は愛人に渡したのだ。 島木は刺激を求めて不倫を繰り返す男ではなく、今回ばかりは例外的に彼女の魅力のために浮気に走っている。 実にヒヤリとする発言だ。277


     「そうですよね」と、言って幸子は肩を落とした。 しかし彼女は諦めたくはなかった。 よほど、「どこに捨てたのですか?」と言おうとしたが、雰囲気的に言える感じではなかったのでやめたが、何とかしたい気持ちは島木に伝わった。337

真実と真相(13)

    幸子はいずれ犯人が分かるからそれて良いと片付けるのではなくて、自分で犯人を見つけるくらいの事をしてもよいのではないか。 駄目でも、探し出して犯人の顔が見たいとさえ思った。 泣き寝入りして諦めていた自分がバカだった、やれるだけの事はやろうと思いながら眠りに就いた。91


 3) 現実


     翌日、幸子は島木に思いきって言った。8 


「島木さん、済んだことの蒸し返しになってしまいますが、この前無くなったお金の件で、私を疑っている人もいると思うのです。 私は、自分で身の潔白を証明したいと思います。 あの封筒に犯人の指紋が残っているかもしれません。 あの封筒、まだ残っていますか」 

真実と真相(12)

     歩きながら嬉しそうに幸子は「占いの通りになってくれたら嬉しいわね」と言った。206 


     「大丈夫よ。 当たるわよ」 などと言われ、幸子はどんな言葉より慰められた気がした。209


     あんなに悩んでいたことが一気に吹き飛び、希望の光が見えた気分である。 幸子は帰宅後、風呂上がりでさっぱりし、シャンプーして濡れた髪をタオルにでふき取りながら久しぶりに心身ともにスッキリ気分を味わった。48 寝る時間になり心地よく蒲団の中に身を沈めると、被害者の自分がこんなに苦しまなくてもよいはずなのに、あまりにも嘆きすぎたのではないかと思った。


    無罪が証明されれば本当に助かる。 全く誰だ、あんな事をしたのは・・・顔が見たいわ、などと腹立たしい気分が増した。 犯人が見つかると判ったら、元気100倍、強気になった。 冷静に考えると、被害者の自分が振り回されるとは全く忌々しい事だ。 幸子は嬉しさの次にむしろ悔しさを募らせた。27

真実と真相(11)

     何だか、何事もなく生きてきたみたいなヒョウヒョウとした易者さんだ。 当たるのかな、と不安に思うが幸子は事情を話してどうなるかを聞いてみた。 


占い師は手相や生年月日を参考にしながら、大切そうな本を開いたりしている。 


     「お金は戻らないが、犯人は見つかるじゃろう。 それも、まもなくじゃ」と、衝撃的な答えが返ってきた。63


     「ええっ。 本当ですか」238


     「占いではそう出ておる」267


     幸子は嬉しさと感動で思わず涙が出た。 まるで感無量といった感じである。 恵子は、その涙を見た時自分の考えている以上に幸子が心に深手をおっていたことを悟った。


     「良かったじゃない」と恵子はもらい泣きしながら、絞り出すように涙を抑えて言うと、次の瞬間二人は抱き合うようにしてその場で泣いた。 


     何だか大切な人に死なれたかのような大袈裟な泣き方に、占い師タカ爺はあきれ気味で苦笑いしたのであった。 そして二人は安心しきった感じでお礼を言うと、晴れ晴れとした気分で占いの席を立ち去った。

真実と真相(10)

     次の瞬間二人は少し固まった。 幸子は占いに興味はある。 占いは8割が当たると聞いていたので、かなりの的中率であるのは知っていた。 でも、2割が外れるのでは困るので、あまり占ってもらいたいと思った事はない。 でも、今回の件はどうだろう。 無駄を承知で気休めになるかもしれない。


     幸子の家庭環境は、親が自分の意志で人生を切り開く方向性を示す発言が多かったので、何でもかんでも占って判断するようになるのではないかと、自分に自信がなかった。 幸子はどちらかというとマイナス思考の性格だったのである。 恵子も占いに興味があるが、病みつきになる不安など全く持たなかった。 むしろ、参考にして良い方向にもっていければ良いと考える程度だった。 良い話でも聞ければ儲けものといった感じでプラス志向ある。 


     しかし現実に恵子が幸子の立場なら、騒ぎ立ててこれ程忍耐強くはなかっただろう。


「聞いてみようか。 どうなるのか」206


「そうね」329


幸子は席に着くと、心配そうに恵子は後ろに立って付き添った。

真実と真相(9)

     確かに、誰に相談したところでどうすれば良いということは考えつかなかったのである。 彼女は友人の恵子に電話をして自分が疑いをもたれているかもしれない不安を話した。213 


「解るわよ。 でも、あんまり気にしなくていいんじゃない」と、恵子は言った。 恵子は比較的裕福な家の娘で、洋服のセンスなどなかなか磨かれている。 条件が揃えばバリバリのキャリアウーマンになる要素を持っていた。 堅実でマイペースな幸子とは違うタイプだが二人は冗談を言い合う良い相棒だった。 どちらかというと、恵子の方が職場の悩みなどを話す方だが、今日は幸子の悩みだ。 77


「貴方だったら疑いをもたれて、気にしないでいられる? 私は駄目だわ」と言われて、恵子はやはり自分だったら耐えられないという気がした。 恵子の慰めはあまり効果をもたないが、翌日二人はお茶を飲んで帰る約束をした。 喫茶店を出て少し歩くと、そこに占い師タカ爺がいたのである。 幸子と恵子は同時に顔を見合わせた。 28

真実と真相(8)

     「無くなる」などと言っていたが、私がお金を盗んだかのような噂でもたっているのではないか。 幸子はお金の紛失の件で嫌な気分になっている所へ、あのような追い討ちをかけられ、被害者意識を拡大させてしまった。143 


     冷静に考えてみると、島木も含めて他の人達は、表面的に疑いを抱いていないよう振る舞っているが、演技なのではないか・・・ 幸子は濡れ衣状態に耐えがたいものを感じた。幸子は社会人になって仕事の苦労がわかり始めた頃で、年齢がまだ若いので気にしすぎるのもあった。 166


     彼女の性格では「出るところへ出てもよいのだ」と主張して、気にしないで頑張れるのは、もう少し社会人をやっていればできることだったのだが。 一晩経つと、ほかにも変な噂が流れているのではないかと心配を大きく膨らました。 幸子の家族は自分が盗んだのではないのだから、心配することはないと軽く受け流すだけであっさりしていた。 244

真実と真相(7)

     幸子は潔癖でややプライドが高く、自分の経歴に傷が付くなどとんでもないことだ。 偉くもないのに偉そうにする人間は嫌でたまらない。 消えてもらいたい嫌な女。 仕事で1枚コピーを取らされているだけなのに、機械を使うなどと指図しやがって・・・268


     幸子はもう少し仕事歴が長ければ、「そんな決まりがあるのですか? どなたが言ったのですか」と言うこともできたのだろうが。 その時はそこまで頭が回転せず、相手にしてまともに話をするのが嫌で、何も言わずにその場から立ち去った。 必要以上に敵を作っても自分の居心地が悪くなるだけなので相手にしなかったのは正解だったかもしれない。 世の中意外に強い人間のご機嫌をとって生きる人の方が圧倒的に多いものである。 


     和を尊ぶつもりのはき違えで、全く嫌になる組織体質である。 男性社会ならいざ知らず・・・ アメリカの自由と責任、ヨーロッパの個人主義は日本では徹底できない組織社会かもしれない。 幸子はこんな所でバカなこと続けていく気にはなれないと、つくづく思った。 


     2それにしても、さっきあの女変なうすら笑いを浮かべたような気がする。

真実と真相(6)

     誰でも仕事に出るのは同じだが、夢を持ちにくい日本の社会に埋もれている自分を自覚していた。 不倫にときめくのも無理はない。 島木は、社会に飛び出したばかりの幸子に、葛藤を繰り返しながら自由に行動する選択肢が多いように見えた。 新しい局面、新しい挑戦が彼女の前に広がっている感じがする。


2. 不安


     幸子は島木の言葉に安心し、その時はそれで納得したが嫌なことが起こったものだと思った。 盗んでいないのだから、正々堂々としていられたのもつかの間だった。 幸子はたまたま離れた場所でコピーを取ろうとすると、「部が違うのだから、この機械は使わないで向こうで取って」と、耳元で低い声がする。 219


     あの意地の悪い女だ。 頭脳明晰からほど遠いのに、全責任を背負って仕事しているかのように錯覚して口出しするタイプだ。 おまけに「コピー用紙が無くなるから」と、強気の口調で付け加えた。 幸子は社内にそんな決まりがあるとは聞いたことはなかった。 彼女には何の権限もないのに、くだらない事に偉そうに指示を出す。 42


 

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